イノベーションを起こすリーダーになろう!~『世界で最もイノベーティブな組織の作り方』  山口 周 著⑤~

本の紹介

おはようございます。あっぺいです。

今週は山口周さんの『世界で最もイノベーティブな組織の作り方』をご紹介していきます。

山口さんの本は何冊か読んでいますが、教養、知的生産物をテーマにしたものが多く、私が仕事をする上でも非常に参考になっています。

今週ご紹介する『世界で最もイノベーティブな組織の作り方』もその一つです。本書は「イノベーションを生み出すのは個人ではなく、組織である」ということを分かりやすく教えてくれます。

1日目は、「イノベーションとは何か」「日本が生み出してきたイノベーション」について羅生門、螺鈿細工、工学などの具体例をとりあげてご紹介しました。1日目のポイントは以下の3点です。

  • イノベーション=既存のものに新しい考えや技術を取り入れ、新たな価値を与えること
  • 「日本人がイノベーションを生み出すのが苦手」というのは誤解
  • 日本人は自国の魅力に気づかず、海外の劣化コピーを作りがちになる

2日目は「どのような経緯でイノベーションが生まれるか」についてリバプール、フィレンツェ、ダーウィン、戦後日本の自動車産業などの具体例を挙げてご紹介しました。

  • 異なる文化が交差する場所でイノベーションが生まれる
  • 様々な個性を持った人物が集まる場所でイノベーションが生まれる
  • 新参者と若者だけがパラダイムシフトを起こすことができる
  • 「既存の理論や技術」×「新参者の理論や技術」=イノベーション

3日目は「イノベーションを生み出せない危険な組織」についてご紹介しました。

「大韓航空801便の事故」と「オランダの心理学者であるヘールト・ホフステードの研究」を取り上げて「権力者に意見を言いづらい環境では生産性が落ち、重大なミスが発生しやすい」という事例をご紹介しました。

  • 日本や韓国には、目上の人間に反論をしにくい、という文化的背景がある
  • 日本や韓国の組織では、部下が上司のミスを指摘できないため、それが損失に直結してしまう
  • 日本や韓国の組織では、若者や新参者が意見を言いにくいため、イノベーションが生まれない

4日目はJ・F・ケネディの組織作りを例として、「イノベーティブな組織の作り方」についてご紹介しました。

リーダーとしてチームを作る際のポイントは次の3点です。

  • リーダーの仕事は「組織をリードすること」ではなく、「組織の運営方針を決めること」である
  • リーダーの仕事は「自由に発言し、互いの意見を批判できる雰囲気を組織内に作ること」である
  • リーダーの仕事は「数ある意見を選択し、その責任を取ること」である

さて、5日目の本日は、「イノベーション起こすリーダーになる方法」についてご紹介します。

最適なリーダーシップは文脈で決まる

リーダーシップとは、「リーダーとフォロワーの関係性」あるいは「リーダーをとりまく周囲の環境との関係性」の中で成立する概念であって、「リーダーの属性」として独立する概念ではないということです。この点を踏まえず、どんな状況でも通用するかのようにリーダーシップのあり様を議論してしまうのは、シチュエーションを考慮せずに道具の有効性を主張するのと同じことですから大きな誤謬のもとになります。

出典:『世界で最もイノベーティブな組織の作り方』  山口 周 著

どのような環境で組織を作るかによって、理想とされるリーダーの在り方は変化します。

その具体例として本書で挙げられているのがチャーチルです。

チャーチル

大英帝国の首相としてヒトラーの第三帝国と戦ったチャーチルですが、彼が一国のリーダーとして評価されるのはその点においてのみです。

第二次世界大戦が始まった当初はほぼ政界を引退していました。1939年のドイツのポーランド侵攻をきっかけにイギリスがドイツに宣戦布告をしたことで、チャーチルは海軍大臣に返り咲きます。1940年には首相に任命され、国防相を兼任してイギリスを勝利に導きました。

しかし、終戦直前には労働党に敗れ、首相の座から退いています。

結局、彼のリーダーシップは、1940年代の欧州において大英帝国を率いてヒトラーの第三帝国と戦う、という極めて限定的なコンテキストにおいてのみ存分に発揮されたということで、その前後においては有効に機能しなかったということです。 

出典:同書

曹操

本書には出てきませんが、私が思い出したのは三国志に出てくる曹操です。彼は若いころに「治世の能臣、乱世の奸雄」という評価をされました。「世が平和に収まっている時は有能な臣下として働くが、乱世になるとずる賢い英雄になるだろう」という意味です。

曹操は世が乱れていた三国時代においては武将、政治家として優れたリーダーシップを発揮しましたが、平和な時代において彼がリーダーシップを発揮できたかは分かりません。

チャーチルにせよ、曹操にせよ、「その時代が求めるリーダーシップ」を持ち合わせていただけであり、「絶対的に理想的なリーダー」であったわけではありません。

6つのリーダーシップスタイル

筆者の山口さんは本書でリーダーシップの在り方を6つに分類して紹介しています。

リーダーシップスタッフ(部下)への影響
指示命令即座の服従
ビジョン長期視点の提供
関係重視調和の形成
民主情報の吸い上げ
率先垂範模範の提示
育成能力の拡大

このスタイルも、環境によってどれが必要とされるかは変化します。

フランスの思想家、文学者のアントワーヌ・ド・サン・テグジュペリ は「もし船を造りたいのなら、男たちをかき集めて森に行かせ、木を集めさせ、のこぎりで切って厚板を釘で留めさせるのではなく、海へ漕ぎ出したいという情熱を男たちに教えねばならない」と言っています。これは典型的な「ビジョン型」リーダーの主張と言えます。 リーダーシップの議論では、一般的にこのような「ビジョン型」のほうが「指示命令型」のリーダーシップスタイルよりも好ましいトーンで語られることが多いのですが、何らかの理由で喫緊に海に漕ぎ出さなくてはならない状態、たとえば火山が噴火して溶岩流が近づいているような状況では「情熱を教える」よりも、とにかく森に行って木を切って船を組み立てさせる「指示命令型」のリーダーシップスタイルが必要でしょう。つまり、あくまでリーダーシップスタイルの是非は、その文脈=コンテキスト次第で決まるということです。

出典:同書

また、他にも、人材が乏しいベンチャー企業であれば「率先型」のリーダーが求められるでしょうが、人材資源が豊富で優秀なスタッフが多い場合は、「育成型」のリーダーシップが望ましいでしょう。

では、本記事のテーマでもある「イノベーションを起こすリーダー」はどのようなリーダーシップスタイルを発揮しているのでしょうか。

海外と日本のリーダーの違い

「フォーチュン500」の中でも「最もイノベーティブ」であると考えられる企業において発揮されているリーダーシップスタイルは、「ビジョン型」が63%と最も高く、「率先垂範型」が42%と最も低くなっています。

(中略)

同項目について日本企業の平均を見てみると、「率先垂範型」が 59%と最も高く、 「ビジョン型」が36%と最も低くなっており、先述した「最もイノベーティブな組織」とは真逆のリーダーシップスタイルを示していることがわかります。

出典:同書

これは何を示唆しているのでしょうか。

山口さんは「日本企業では、組織全体の向かうべき方向や達成すべきゴールを管理職が明確化せず、日々の業務に介入している」と指摘します。

長期的な目標を組織全体に浸透させることができていないため、上司が部下に自由と権限を与えることができていないということです。

サン・テグジュペリの例で言うと、「森に行かせ、木を集めさせ、のこぎりで切って厚板を釘で留めさせる」ことにを指示している状態です。下手をすると、彼らは船を作っていることすら知らないのかもしれません。

では、この状況を改善するためには何が必要なのでしょうか。

「リーダーシップ」に欠かせない「ビジョン」

結論から先に書きます。

リーダーシップに必要なのは「共感できるビジョン」です。

詳しくご紹介していきます。

高度経済成長期では「アメリカ」が目的地であった

欧米社会におけるリーダーシップのあり様には聖書が強い影響を与えています。旧約、新約を問わず、聖書には繰り返し「集団が危機的状態に陥り、それを救うためにリーダーが立ち上がって集団を率いて危機を脱する」という構図のストーリーが登場しますね。典型的なものには旧約聖書の出エジ プト記やノアの方舟があります。「ここ」から「ここではない別の場所」へ。そしてその「別の場所」がどこなのか、どのような場所なのかを知っているのはリーダーしかいないというストーリー です。

(中略)

つまり、リーダーシップの本質の一面は「移動」にあり、その必然的結果としてリーダーは常に「行き先」を示すことが求められるということです。ところが、先述のリーダーシップスタイル調査の結果は、日本企業のリーダーは、組織メンバーに対して「行き先」を示していないということを示しています。

出典:同書

高度経済成長期から1980年代前半まで、日本企業は組織に「行き先」を示す必要がありませんでした。

なぜなら、アメリカという成功モデルをひたすら追い続けるだけで良かったからです。

しかし、1980年代後半に、日本がアメリカを追い抜いてしまったのです。

それまでひたすらに「アメリカを追いつく」ことを目標としていたのに、「アメリカを追い抜いてしまった」ため、日本企業のリーダーは「行き先」を見失ってしまいました。

その後に起こったバブル崩壊が、その「行き先なき経営」のもろさを物語っています。

共感できるビジョン

何らかの「行き先」を示すことがリーダーシップの条件となるのであれば、現在の日本企業の多くは何らかの形でその条件を満たしているでしょう。

しかし、その「行き先」の重要なポイントを満たせていないことを山口さんは指摘します。

ビジョンに求められる最も重要なポイントーーそれは「共感できる」ということです。

出典:同書

リーダーの仕事とは「ここではないどこか」を組織に示し、そこに連れていくことです。

しかし、共感がなければ、誰も移動をしてくれません。

では、どのように「共感」を獲得すればいいのでしょうか。

山口さんは「Whehe 」「Why」「 How」の3つの要素が必要だど指摘します。

Where(目的)

現状からどこに向かうか、という目標設定です。

これは組織に所属する全員が理解できる具体的なものでなくてはいけません。抽象度が高すぎて、解釈が人によって変わってしまうからです。

「もっと良くする」という目標を立てたとしても「良い」が人によって違うからです。

しかし、だからと言って具体的すぎてもいけません。

「〇〇までに××を達成する」では、そこに向かうモチベーションにつながらないからです。そこに共感が生まれるような適度な具体性が必要なのです。

私が個人的に好きなのはオンデーズという眼鏡を売る会社の「関わる人を豊かにする」という企業理念です。

オンデーズの社長である田中修治さんが以前テレビで話していたことです。「『みんなを幸せにしたい』と考えていたが、幸せとは主観的なものだから人によって違う。でも『豊かさ』は客観的に評価できる。だから、『みんなを豊かにしたい』という目標で会社を経営している」

これはWhere(目的)の設定として非常に合理的だと思います。

Why(大義名分)

Where(目的)を設定することで、同時に「現状から移動する理由」を説明する必要性が生まれます。

「今いる場所」から「ここではない場所」に移動するのに十分納得できる理由がなければ、組織のメンバーも努力をしてくれないからです。

どんなに素晴らしいWhere(目的)を設定したところで「それを達成する必要があるのか?」という疑問を抱えたままでは組織は機能しません。

高度経済成長の時代では「経済的に豊かになることが幸せに直結する」という考えが支配的だったため、利潤を追求することに誰も疑問を持ちませんでした。

現在では「経済的豊かさ」と「幸福」に結びつきはないという考えが一般化しています。

給料が上がることよりも、自分の時間を奪われることを嫌がって、若い世代が出世を嫌うのもその一面です。

現在の組織のリーダーは経済的成長以外の「Why」=「なぜ変化をしないといけないのか」を考え、提示しないといけないのです。

How(手段)

Where(目的) とWhy(大義名分)を示すことは重要なことですが、それだけでは足りません。

「How」=「目的を達成するための手段」をある程度提供しないといけません。もちろん、詳細な実行計画を用意する必要はなく「こうやったらうまくいきそうだな」と感じられる程度のものでかまいません。

「目的地(Where)」に向かって「なぜそこの行く必要があるのか(Why)」を理解させた上で、最初の一歩を踏み出すきっかけとして「どうするのか(How)」を示すことがリーダーシップと言えます。

共感できるビジョンの例

では、どのようなビジョンが「Where 」「Why」「 How」を兼ね備えた「共感できるビジョン」なのでしょうか。山口さんは4つの具体例を紹介してくれます。

  • アポロ計画
  • 十字軍遠征
  • Google
  • apple

順番に見ていきましょう。

アポロ計画

「Where」1960年代に人類を月に立たせる   

「Why」 現在の人類が挑戦しうるミッションの中で 最も困難なものであり、であるがゆえにこの計画の遂行は、アメリカおよび人類にとって新しい知識と発展をもたらす   

「How 」民間/政府を問わず、領域横断的にアメリカの科学技術と頭脳を総動員して最高レベルの人材、機材、体制をととのえる。

出典:同書

アポロ計画が発表される前、NASAの職員の多くは宇宙計画の縮小を覚悟していたそうです。

その状況でケネディがこのスピーチをしたのです。

NASAの職員のモチベーションが刺激されたのは言うまでもないでしょう。

十字軍遠征

「Where」 聖都エルサレムを異教徒の手から奪回する   

「Why 」 われわれの神がそれを望んでおられる   

「How」 神の免罪を与えることで、最も勇敢な騎士を集め、遠征させる。

出典:同書

why(大義名分)として「神がそれを望んでいる」は、歴史的にも多くの場面で利用されてきました。

十字軍は結果として各地で極悪非道な所業を繰り返しますが、「人集め」としては効果的なビジョンであったことは間違いありません。

Google

「Where」  世界中の情報を整理し、誰もがアクセスできるようにする  

「 Why」   情報の格差は民主主義を危うくするものであり、根絶しなければならない 

「How」   世界中から最高度の頭脳を持つユニークなタレントを集め、コンピュータとインターネットの力を最大限に活用する

出典:同書

「情報格差の是正」が大義名分として使われているのが特徴的です。また、「How」も具体的であり「Googleの社員は世界最高度の頭脳を持っているんだぞ」と社員に示すことで、彼らに自己肯定感と責任感を与えることができます。

apple

「Where」 人類の知性にとって自転車になるような道具を、普通の人々に提供する

「 Why」   自由になるためには知性が必要である

「 How」   テクノロジーとリベラルアートの交差点をレバレッジする

出典:同書

スティーブ・ジョブズが「人類の知性にとって自転車になるような道具を、普通の人々に提供する」という目的地を設定したのは初代マッキントッシュの発表時です。

30年以上前の企業理念が今も色あせないのは、そこには普遍的な価値観が含まれているからです。

「自転車」という具体例は誰にでもイメージできます。初めて自転車に乗れるようになったときの感動を忘れることはありません。あの「行動範囲が劇的に広がる」という感動を知性の面で再現することがappleの目的なのです。

まとめ

本日の記事も非常に長くなりました。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

本日の内容をまとめます。

  • 所属する組織の現状によって、求められるリーダーシップ像は変わる
  • イノベーションを起こすにはビジョン型(長期視点を提供する)リーダーシップが必要
  • ビジョン型リーダーシップは「目的」「理由」「手段」を提供することである
  • 提供する「目的」「理由」「手段」は共感できるものにする

今週も一週間かけて一冊の本を紹介しました。

ブログを書き始めてから気づくことですが、本によって内容の密度が全然違います。

1つの記事でも簡単に紹介できる本もあれば、何日かけても「もっとしっかり紹介したい」と思う本もあります。

山口周さんの書籍は後者です。今回は『世界で最もイノベーティブな組織の作り方』をご紹介しましたが、それ以外にも名著ばかりですので、またいつか紹介したいと思います。

今週も一週間お疲れさまでした。

連日雨で嫌になりますね。週末も雨になりそうです。雨の日こそ読書です。

ここまで読んでいただいてありがとうございました。

みなさんの世界が、また少し美しくなりますように。

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