世界の作られ方を知ろう!~『世界システム論講義 ──ヨーロッパと近代世界 』川北稔 著①~

本の紹介

おはようございます。あっぺいです。

このブログでは「世界の在り方は変わらない。しかし、世界の捉え方は変えられる」をメインテーマとしてきました。

ここで言う「世界」とは「存在する事物・現象の総体」のことを指します。

自分の身の回りにあること、起こる出来事はコントロールできません。しかし、それをどう捉えるかによって、人生の幸福度は変わります。

そういう意味では「世界の捉え方」は非常に重要です。

今回は今までとは違った意味での「世界の捉え方」についてご紹介したいと思います。

「世界」には「地球全体。そこにある人間社会。万国。」という意味もあります。

今回はそういう意味での「世界の捉え方」に関する本をご紹介します。

今回ご紹介する『世界システム論講義 ──ヨーロッパと近代世界 』は、「世界がどうして今の状態になっているのか」を長期的かつ広範囲な視点から考察した名著です。

筆者の川北稔さんは大阪大学の名誉教授をされており、近代のイギリス史がご専門です。本著でもイギリスがいかにしてヘゲモニー(覇権)国家となり、そのヘゲモニー(覇権)がアメリカに渡っていくまでの過程が分かりやすく紹介されています。

この一冊を読めば「アメリカが中心になった今の世界」がどのような過程で生まれてきたかを把握することができます。

何回に分けてご紹介するかはまだ決められておりませんが、お付き合いお願いします。

初回の今回は「世界システム論」についてご紹介します。

「世界システム論」とは何か

本書のタイトルにもなっている「世界システム論」という考え方があります。

「世界システム論」とは、近代世界を一つの生き物のように考え、近代の世界史を有機体の展開過程と捉える考え方です。難しいですね。その考えに至るまでの考察をご紹介します。

国という単位で歴史を見ること

いまわれわれが「国」と意識している、いわゆる国民国家は近代の産物であり、少し時代をさかのぼれば、ドイツなどという国はないし、イタリアという国もインドという国もない。イギリスは、イングランドとウェールズとスコットランドなどに分かれていたし、フランスでさえ、いまのようなものではなかった。日本にしても、江戸時代の人びとにとっては「国」とは「日本」のことなどではなくて、各藩のことであったことはいうまでもない。このことだけからしても、「国」を歴史の単位とすることは、奇妙なことなのである。

出典:『世界システム論講義 ──ヨーロッパと近代世界 』川北稔 著

我々は無意識的に「国ごとに固有の歴史がある」と考えがちです。

しかし、実際は「国」という概念は時代によって変化します。

去年、香港のデモが世界的ニュースになりましたが、香港はかつて中国でした。その後イギリスの植民地となり、また中国に返還されました。この経緯を無視して「香港は中国だ」と単純に考えることはできません。すべての国には「いろいろの過程があって今の国に状態になっている」という事情があるのです。

また、我々は「先進国」「後進国」という表現を日常的に使っていますが、この言葉にもバイアス(偏った考え)がかかっています。

「先進国」「後進国」というのは「先に進んでいる国」「まだ進んでいない国」という意味です。この表現は「遅かれ早かれ、進むべき方向が決まっている」という前提があることを意味します。そして、この「進むべき方向」というのは西欧をモデルとした「工業化して経済的に豊かな国」を指しています。

つまり、我々は無意識的に「いずれすべての国が西欧化する」という考え方をしています。このような考え方を筆者の川北さんは「単線的発展段階論」と呼びます。

この「単線的発展段階論」は日本人にとって非常になじみがあります。なぜなら日本は実際に明治維新をきっかけに西欧化に成功し、「先進国」の一員となっているからです。

しかし、川北さんはこの考え方に疑問を持っています。

各国の努力によって西欧化は進むのか?

この考え方(単線的発展段階論)からすれば、諸国は、互いに干渉されることなく、いわばセパレート・コースを使って競走しているのであり、 張った国は「先進国」となったが、 張らなかった国は「遅れて」しまい、「後進国」となった、ということになる。たとえば、ピューリタニズムと呼ばれた信仰を基礎として、禁欲と勤勉を日常道徳とする人が多かったイギリスでは、資本主義経済の発展が著しく、世界で最初に工業化に成功し、大英帝国を形成して世界を支配した。これにたいして、ヒンズー教やイスラム教の世界となったインドでは、人びとはそのようには行動しなかったので、結局、イギリスの植民地になってしまい、いまでも「後進国」となっている、とみなされたのである。

出典:同書

こういった考え方をする人は多いです。

日本と中国の国民性を比較し、日本人が勤勉であったから近代化に成功したと考える人もいます。

しかし、本当にそうなのでしょうか。

実際には様々な要因がからみあっています。実際、1980年代までであれば「日本は近代化に成功し、中国は近代化に失敗した」と言えたでしょうが、その後の日本経済の低迷と中国の躍進を考慮すれば、「日本が近代化に成功し、中国は失敗した」という考えそのものが否定される未来が来るかもしれません。

そして、現在の日本や中国の在り方を決めたのは自国の影響だけではありません。

全ての国は世界の影響を受けている

近代の世界は一つのまとまったシステム(構造体) をなしているので、歴史は「国」を単位として動くのではない。すべての国の動向は、「一体としての世界」つまり世界システムの動きの一部でしかない。「イギリスは進んでいるが、インドは遅れている」などということはなく、世界の時計は一つである。現在のイギリスは、現在のインドと同じ時を共有している。両者の歴史は、セパレート・コースをたどってきたのではなく、単一のコースを押し合い、へし合いしながら進んできたのであり、いまもそうしているのである。いいかえると、「イギリスは、工業化されたが、インドはされなかった」のではなく、「イギリスが工業化したために、その影響をうけたインドは、容易に工業化できなくなった」のである

全ての国が「工業化されて経済的に豊かな国」になるのではないということです。

地球の資源は有限です。

一部の国が「豊かな国」になる過程で「搾取される国」が生まれてしまったのです。

次回以降に詳しくご紹介しますが、植民地がその最たる例です。「豊かな国」に資源を提供し続けることが目的となった国が豊かになることはありません。

宗主国(植民地を所有する国)と植民地支配された国の格差は現在になっても埋まることはありません。

このように、近代世界を「各国が自分のレーンを走っている」のではなく、「1つのレーンを各国が押し合いへし合いして走っている」と捉える考え方が「世界システム論」です。

ヘゲモニー国家

世界システムの歴史では、ときに、超大国が現れ、中核地域においてさえ、他の諸国を圧倒する場面が生じる。このような国を「ヘゲモニー(覇権) 国家」という。もっとも歴史上、このような国は、十七世紀中ごろのオランダ、十九世紀中ごろのイギリス(「イギリスの平和」)、第二次世界大戦後、ヴェトナム戦争前のアメリカの三国しかない。

出典:同書

ヘゲモニー(覇権)国家の簡単な紹介です。

世界の中心となるほどの影響力を持った国をヘゲモニー国家と呼びます。

世界史に詳しくない私はかつてオランダがヘゲモニー国家であったのを知って驚きました。

また、今でも十分パワフルに感じますが、アメリカはすでにヘゲモニー国家ではないということです。

確かに、2016年のトランプ旋風の際に「Make America great again!(アメリカをもう一度偉大な国にしよう!)」というスローガンがあれほどウケたということは、アメリカ国民の自覚として「アメリカは世界の中心ではない」という認識が一般的なのかもしれません。

世界の現状は、ヴェトナム戦争以後、アメリカがヘゲモニー(覇権) を喪失した状況にあることは、ほとんどの研究者が承認している。とすれば、かつてイギリスのヘゲモニーが崩壊したとき、やがてアメリカのそれが取って代わったように、どこか別の地域がヘゲモニーを確立するのだろうか。

出典:同書

この本は2016年に発行されていますが、現在ではどうなのでしょうか。

この5年で中国がヘゲモニーを握ったとは言えないでしょうし、いまだにアメリカと小競り合いをしているような感じですね。2018年には米中貿易摩擦がありましたし、2020年は新型コロナウィルスの世界的な影響がありました。

世界全体がドタバタしている状態ですが、このドタバタの末に新たなヘゲモニー国家が誕生するかもしれませんね。

まとめ

本日は「世界システム論」という考え方をご紹介しました。

世界を「国の集合体」としてではなく「一つの生物」として捉える考え方を「世界システム論」と言います。

すべての国が「工業化された豊な国」というゴールに向かって用意されたレーンを自分のレーンを走っているのではなく、たった一本のレーンを各国が押し合いへし合いながら走るため、国によって格差が生まれてしまいます。

次回以降、どういう過程で「工業化されて経済的に豊な国」と「搾取される国」に世界が分かれていったかを詳しくご紹介していきます。

ここまで読んでいただいてありがとうございました。

みなさんの世界が、また少し美しくなりますように。

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