干された時こそ、自分の時間を楽しもう!~伊勢物語『渚の院』~

古典の紹介

こんにちは、あっぺいです。

職場で異動があったり、転職したり、環境の変化で自分の居場所がなくなったことはありませんか?

ただの異動ではなく、明らかな左遷であったり、自分の力を発揮できない環境に異動することもあります。

「きっと誰からも評価されてないからこんな仕事をやらされてるんだな…」

そんな思いで日々を過ごすのはつらいですよね。

今回は新しい環境に馴染めない、モチベーションを上げられない時の考え方についてご紹介します。

伊勢物語とは

伊勢物語は平安時代に作られた歌物語というジャンルの文学作品です。

歌物語、というのはその名前のとおり、歌を中心とした物語です。どのような人が、どのような場面でその歌を詠んだのか、にフォーカスを当てています。

主に在原業平(ありわらのなりひら)が詠んだ歌が多く登場します。

在原業平についてはまたいつか記事にしたいと思います。

渚の院のあらすじ

画像出典『伊勢物語絵巻』

惟喬親王(これたかしんのう)という人が、歌好きの貴族と鷹狩にでかける話です。

惟喬親王は第一皇子であるのに、藤原氏の陰謀で皇位継承の望みを絶たれた人です。

今風に言うと、完全に干されてしまった人です。

一緒に鷹狩りに行く貴族も惟喬親王と同じで貴族界で干されています。カリッカリに干されてます。

彼らは鷹狩にきたけど、結局桜を見て歌ばかり詠んでいます。

その中の一人(在原業平)が、

世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし

訳:「世の中に桜がなければ、春の人の心はのどかであれたのになあ」

と詠みます。

するともう一人が、

散ればこそいとど桜はめでたけれ憂き世に何か久しかるべき

訳:「散ってしまうから桜は素晴らしいんだ、無常の世の中で永遠のものなんてない」

と返します。

ここまでがよく教科書に出てくる内容です。

歌の解釈

この記事のテーマから少し逸れますが、この歌のやりとりも非常に素晴らしい。

世の中にたえて桜のなかりせば春の心はのどけからまし

これは世の無常を嘆く歌のなのです。桜を恋の象徴だと解釈することができます。

世の中に桜がまったくなかったなら=誰にも恋をしなければ

(桜が散った後の)心はおだやかだったろうに=失恋に苦しむこともなかったろうに

それに対する歌

散ればこそいとど桜はめでたけれ憂き世に何か久しかるべき

これは世の無常を肯定的に捉えた歌です

散ってしまうからこそ桜は美しい=終わりがあるからこそ恋は楽しめるんだよ

このつらい人生で永遠に続くものなんてない

このやりとり、素敵ですよね。

すべてのものに終わりがきてしまう。だけど、終わりが来るからこそ、今あるものを大切することができるんじゃないでしょうか。

恋人と別れることは決まっています。失恋かもしれませんし、死別かもしれません。だからこそ、今一緒にいられる時間を大切に過ごしたいですよね。家族や友人との関係も同じです。

その後の展開

ここまでは非常に風流ですばらしい内容でしたね。

無常観を愛でる風流人の話。

しかし、ここからが俗っぽいんです。

彼らはみんなべろんべろんになるまで飲み続け、天の川という名の川に辿りつきます。

そこで一人が「このまま織姫の家までいって織姫抱いちゃうよ!」という内容の歌を詠み、

それに対して別の酔っ払いが「織姫には彦星がいるから、お前なんか相手にしねーよ」と返します。

完全に酔っぱらいのシモネタです。

さらに離宮に帰り、酔いつぶれた惟喬親王が寝ようとすると、「さみしいからまだ寝ないでよ」という歌を詠みます。

後半がぐだぐだすぎませんか?

しかし、私は後半部分も大好きです。

少し文法的な話をしますが、本文においては完了の助動詞は「つ」ではなく「ぬ」しか使われないんです。

「つ」は意図的な動作につく助動詞で、「ぬ」は自然発生的な動作につきます。

つまり、彼らの行動はすべて無計画、自然発生的なのです。

『渚の院』の登場人物の行動は、予定を決めずに旅行にでかけて馬鹿騒ぎする男のそれに似ています。

すべてを分かったようなことを言っておきながら、酒を飲んでつるみ、バカなこと話す。

それだけで楽しい。

注目すべきは、完全に干されている彼らが楽しんでいることです。どんな環境をも受け入れ、それを楽しんでいます。これぞ無常観を解した生き方じゃないでしょうか。

『渚の院』から学んだこと

私は『渚の院』を読んで少し気が楽になりました。

貴族の世界も、現代と同様に熾烈な出世レースがありました。

中にはそこから脱落してしまう人もいます。

しかし、そんな時は無理にレースに戻る必要はありません。

むしろ「せっかく干されてんだから、ゆっくりしよう」と思えばいいのです。

仕事に追われる生活をしていると、自分の時間、家族との時間、友人との時間を多く犠牲にすることになります。

物事がうまくいかないときは、一度目線をそらしてみることも大切だと思います。

本文の和歌に出てきたように、世の中に永遠に続くものなんてありません。良いことも悪いこともいつか必ず終わりがきます。

在原業平も晩年には蔵人頭(くろうどうのとう)という要職を務めています。

嫌なことも必ずいつか終わります。それを笑いながら待ちましょう。

まとめ

  • すべての事柄(良いこと・悪いこと)にはいつか終わりがくる
  • うまくいかない時は、それを受け入れて楽しむ

全てのものには終わりがあるからこそ、一瞬一瞬を大切に過ごすための考え方のご紹介をしました。みなさん、今日も大切な一日です。きっと素敵な一日になりますよ!

ここまで読んでいただいてありがとうございました。

みなさんの世界が、また少し美しくなりますように。

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