時代遅れな制度を弔おう!~『疲れすぎて眠れぬ夜のために』内田樹 著~

本の紹介

おはようございます。あっぺいです。

時代の変化に伴って、いろいろなものが急激に変わっていますね。

コロナがなければテレワークなここまで広がらなかったでしょうし、職場の飲み会を無くなってよかったと感じている人も多いでしょう。また、ハンコによる決裁文化も無くなる方向に向かっています。

さまざまな既存の制度に対し「これはもう無駄だから、そろそろ無くさないか?」という意見が出てきているように感じます。

実際、時代の変化に合わせて制度そのものが時代遅れになるのは自然なことです。

だからこそ、今まで使ってきた制度へのお別れの仕方が大切になります。

今日は内田樹さんの『疲れすぎて眠れぬ夜のために』に出てきた言葉をご紹介します。

 どんな制度も必ず腐ります。でも賞味期限が切れたからといって、それがかつては美しいものであった、おいしいものであった事実は変わらないのです。「非常にあれはよかったね。だけどもう腐っちゃったんで、食えないんだよ。そろそろ賞味期限が来たから捨てようか」ということについて合意形成を整えて、そうやって制度改革をソフトランディングさせることがたいせつだと思います。

 不思議なもので、「あれはもうダメだ。もう古いから棄てる」というふうに言い放ってしまうと、制度というのはなかなかなくならないのです。逆に、「あれはなかなかよいものだったね、あのときには実に役に立ったよ」というふうにその事績を 称えてあげると、先方も「自分がもう死んでいる」ことを受け 容れて、静かに姿を消してくれるのです。

 ぼくはこういう「礼儀正しく、不要物を棄てる」ことを「弔う」と言っているんですけれど、すごくたいせつなんですよ、これは。相手が人間であれ、制度であれ、イデオロギーであれ、「死んだもの」をきちんと弔うということは。最後に唾を吐きかけるんじゃなくて、最後には花をそえて、その業績を称えて、静かに成仏してもらう。そうしないと、賞味期限の切れた腐った制度が、なかなか死なないでのたうち回るようなことになるのです。

出典:『疲れすぎて眠れぬ夜のために』内田樹 著

制度の時代遅れを否定するのは誰か

「この制度ってもう時代遅れだな」と気づくのは誰か。

たいていの場合、それは若者か新参者です。

古株や年長者は、その制度の中で守られているため、その制度が時代遅れになっていることに気づきません。

前述したテレワークや職場の飲み会もそうでしょう。毎日出社し、同僚と飲みに行くことが当たり前となっていた世代からすると、それが無くなってしまうのはどこか寂しいものです。

彼らだって、若い時はそれに疑問を持っていたかもしれません。

しかし、彼らの世代は無条件に「こういうものだから、君も従いなさい」と言ってその制度に組み込まれ、当然のようにその制度を使うようになりました。

結果として、彼らは長い年月をかけてその制度を受け入れ、彼らのアイデンティティの一つに組み込まれていきます。

そんな彼らからすれば、新参者や若者が「え、これって無駄じゃないですか?」と指摘しても、受け入れることはできない。

「そんなことはない、昔からあるものなんだから、意味があるんだよ」という答えしかできない。

新参者や若者は「具体的にどんな意味がるんですか?」と聞くでしょう。

ここで具体的な意味を答えられることもありますが、そうでない場合、その制度はもう時代遅れだと判断されてしまいます。

もちろん、制度そのものは時代遅れになってきているのでしょう。

しかし、の事実を突きつけられると、その制度の内部にいた人、その制度を違和感なく使っている人が傷つくのです。

新参者や若手にそんな意識がなかったとしても、彼らは自分自身が否定されたかのような気持ちになる。「あなたが使っているものはもう古いんですよ。」と言われるのと同じ意味ですから。

だからこそ、制度の時代遅れを指摘し、その制度を廃止する時には配慮が必要なのです。

まだその制度を違和感なく使っている人、場合によってはその制度に守られている人。そういう人がいることを理解した上で、彼らを傷つけないようにしないといけません。

制度が時代遅れなのか、人の努力不足なのか

また、誰が見ても制度が時代遅れではないのに「この制度はもう使えない」と言われることもあります。

その場合、制度を利用する人間の努力が足りていない、ということが想定されます。

簡単な制度と違って、複雑で難解な制度もあります。

そういう制度は理解し、有効活用するまでに時間がかかります。

例えば年金制度。

年金制度は、しっかりと理解すれば優れたものであることが分かります。

実際のところ「長生きリスクに対する保険」という理解をすればそれほど難しいものではありません。

しかし、年金制度をうまく理解できない者は「こんな制度すぐ破綻する。若者は報われない」といって、年金の納付をやめてしまいます。

しかし、繰り返しますが、きちんと理解すれば年金制度が破綻する可能性は極めて低いです。

確かに、昔の世代が納めていた額と、今の現役世代が納めている額は違います。しかし、それは人口構造上致し方ない部分もありますし、インフレという概念も加味して考えなければいけません。

そういった制度を理解し利用する努力を怠って「制度が時代遅れだ」と主張する人もいます。

この場合、制度が時代遅れなのではなくて、制度の利用者に問題があると言わざるを得ません。

このように、もちろん実際に制度が時代遅れになることもありませんが、よく観察すると、制度利用者が制度を理解する努力を怠っているだけのこともあるため、注意が必要です。

だからこそ、既存の制度に手を加えたり、廃止する時には慎重にならないといけないのです。

まとめ

本日は内田樹さんの「疲れすぎて眠れぬ夜のために」の言葉をご紹介しました。

内田さんはフランスの現代思想を専門とされながら、合気道では館長を務めるほどの腕前をお持ちです。現代思想×武道。この距離感が革新的な発想と独特の視点を生んだのでしょう。個人的に本書で面白いと感じたのは「アメリカの開拓時代のトラウマがハリウッド映画にも反映されている」という説です。かつては「エイリアンはアメリカ社会における女性の社会進出を描いた映画だ」という趣旨の論文を発表されました。こちらも非常に面白かったです。内田さんの本はどれもオススメできます。

では、今回の内容をまとめます。

  • 全ての制度に賞味期限があるが、その制度を好んで利用している人もいる
  • 制度そのものではなく、制度利用者の努力不足から制度が否定されることもある
  • 以上の理由から、既存の制度を変えたり、廃止する時には慎重にしないといけない

ここまで読んでいただいてありがとうございました。

みなさんの世界が、また少し美しくなりますように。

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