理想のリーダー像を知ろう!~『貞観政要』呉兢(ごきょう)~

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おはようございます。あっぺいです。

さて、今週は「上司になった時に読むべき本」というテーマで本を紹介していきます。

1日目の今日は『貞観政要』です。

まず簡単に貞観政要についてまとめます。

貞観政要とは?

唐の第二代皇帝である太宗(李世民)が統治した時代を「貞観の治」と呼びます。

この時代は中国の歴史で最も安定した時代とされています。

貞観政要は、太宗皇帝と彼を補佐した重臣たちとの間で交わされた問答をもとに編纂されています。日本においても、北条政子や徳川家康が参考にしたとされています。

編纂したのは呉兢(ごきょう)という唐の歴史家です。彼が生きていた時代は、「貞観の治」が終わった後で、唐に政治的混乱があった時期です。

おそらく、宮中の混乱を目の当たりにした呉兢は「貞観の治」の素晴らしさを顕彰することで、王朝を立て直すヒントとしたかったのでしょう。

『貞観政要』をなぜオススメするのか?

その理由は、太宗皇帝が現代における理想的なリーダーのイメージに非常に近いからです。

詳しくは後述しますが、彼は決してワンマンタイプのリーダーではありません。もちろん、ワンマンでも王朝を維持するだけの力を持っていたと思われます。

しかし、自分よりもチームスタッフの意見を優先し、自分への批判も喜んで受け入れる器の大きさを持っていました。リーダーがそういう柔軟な姿勢を持っていたため、チームスタッフも安心して自分の能力を発揮することができたのです。

『貞観政要』は全十巻四十篇で編成されています。全て読むとかなりの量になります。今回はその中でも重要なポイントにしぼってご紹介します。

太宗皇帝(李世民)とは?

太宗は、唐の第2代皇帝です。姓名は李世民(りせいみん)。唐の初代皇帝(李淵)の次男です。隋末の混乱期に父の李淵を補佐して、挙兵、各地を転戦しました。武人としても非常に優れ、特に弓を使うことを得意としました。
父が初代皇帝に即位した後、尚書令に任じられ、優れた才能を発揮しました。その功をねたんだ皇太子である兄李建成(りけんせい)に命を狙われてしまいます。

自分の命を守るため、仕方なく兄と弟の李元吉(りげんきつ)を長安宮廷の玄武門で殺害し(玄武門の変)皇帝(太宗)に即位しました。

私はこの「自分の兄弟を殺さざるをえなかった」というトラウマが、太宗皇帝を名君に育てあげたのだと考えています。「兄弟で殺し合うような国を作ってはいけない」「兄弟二人を殺してまでして皇帝になったんだから、良い国を作らないといけない」という思いが「貞観の治」を生んだのだと私は考えています。

 彼は即位前は完全に武人でした。「自分の力で何でも解決する」という感じで常に前線に立つタイプでした。ところが、自分が皇帝に即位してからは「いかに家来が働きやすい環境を作るか」に気を配ります。立場が変わったことによって、働き方を変えたのです。この自分へのニーズを察知する力変化への対応力が太宗のすごさです。我々も、職場での立場が変わることで働き方を変えないといけません。いつまでも自分が最前線で力を発揮するのではなく、部下が力を発揮できる環境を作るのが上司の仕事なのです。

彼がいかに優れた人間であったかを本気で紹介しようすると、私の生涯をかけても語り尽くせません。よって今回はかなり簡略化してご紹介します。

太宗(李世民)がリーダーとして理想的だと言えるのは、以下の3つを持っているからです。

  • 器のでかさ
  • 向上心
  • 気配り

今回は『貞観政要』をから窺える、リーダーとしての理想的な性質3点ついてご紹介します。

器のでかさ

太宗はむちゃくちゃ器がでかいです。東京ドーム何個分か分からないくらいです。

前述した通り、彼は皇太子である兄から嫉妬され、命を狙われます。仕方なく兄を殺し自分が即位するのですが、その時、政敵であった兄の腹心の魏徴(ぎちょう)と王珪(おうけい)を重臣として重用します。この二人は諫議大夫(皇帝にダメだしする仕事)をしっかりと果たし、何度も太宗を諫めました。

そもそも、自分の命を狙った政敵の腹心です。「こいつらのせいで俺は殺されかけたし、仕方ないとは言え兄を殺してしまった。こいつらさえいなければ…」と恨むのが普通でしょう。しかし太宗は「優秀だから仲間にしよう。もともと敵だった分、俺の短所も知ってるはずだから、ダメ出ししてもらおう」と考えたのです。普通の人間ではここまでの決断はできないでしょう。

もともとの腹心であった房玄齢(ぼうげんれい)、杜如晦(とじょかい)という二人の部下に加え、この魏徴と王珪の四人を中心として「貞観の治」は始まるのです。

重用された魏徴と王珪からしても「政変に負けて一度は死んだようなもの。それでも力を認められて生かされているんだったら、貰った命を精一杯使おう」という考えになったのではないでしょうか。この二人は「普通だったらなかなか言いづらい批判」をしっかりと太宗にします。彼らも太宗の思いに応え、命をかけて仕事をしたのです

向上心

太宗は向上心がすごいんです。変なプライドを持たず、自分が知らないことを学ぼうと必死になります。

側近にいろいろ言われることをきちんと記録し、家に中に張り紙するんです。そして出入りの度のそれを見る。ちゃんと下から出た意見を大切にする姿勢があるんです。それだけではありません。

前述のとおり、太宗は即位前は武人として活躍しました。馬に乗って戦争に参加ばかりしていたので、落ち着いて本を読むことなんてありませんでした。

その分、即位してからは分からないことをちゃんと部下に聞いたのです。武人としてのプライドなんて気にせず、「皇帝としてどうすればいいのか?」ということを部下に聞きまくった。その問答が書かれているから貞観政要は素晴らしいんです。

太宗は政治のことなんて何も分かっていません。だからこそ、教える部下たちも工夫して話すんです。エビデンスが必要になります。このエビデンス、今ならデータなどで示せますが、当時のエビデンスはすべて歴史です。「秦の始皇帝がこんなことをしたので、こんなことが起こってしまった」といった風に、実際にあった皇帝の失敗などを具体例として分かりやすく盛り込む。すると太宗も「なるほど、そういうことか」という風に理解する。過去のデータに基づいた実践的かつ具体的なアドバイスが盛り込まれているから『貞観政要』は素晴らしいのです。

さらに太宗がすごいのは、自分でも本を読んだことです。側近が「例えば、『書経』にはこういう話があり、また『論語』にはこう書いてあります」などと話すと、太宗は「なるほど、面白そうだから俺も読んで見るわ」といって読んでしまう。即位してから10年もたつと、側近よりも古典に精通するようになります。

部下のオススメをちゃんと聞き、自分で興味を持って勉強する。これができたらから太宗は名君になったのです。

気配り

器もでかく向上心も高かった太宗。しかし、それだけではありません。彼はすごく人に気を遣うリーダーでした。

前述したように、太宗は房玄齢、杜如晦、魏徴、王珪の4人を側近として重用しました。房玄齢、杜如晦は生え抜きの腹心です。即位前から一緒に働いています。それに対して魏徴、王珪はもともとは政敵の腹心です。今風に言うと、ライバル社からヘッドハンティングされてきた人材です。だからこそ、この双方の意見が食い違うこともあります。立場が違うから仕方がないですよね。太宗はそんな時、どちらの味方にもなりませんでした。「双方とも正しい。だからこそ、双方の意見を大事にする」というスタンスを取り続けたのです。これは以前ご紹介した「思考の次元を上げる考え方」ですね。

この4人の側近の誰かに肩入れすることなく、4人に対して公平に接したことで、この4人も安心して意見を言うことができました。

しかし、太宗の気配りは側近だけにされたものではありません。

彼は常に民のことを気にしていました。宮中の財政が苦しいときも「腹が減ったからと言って、自分の手足を食う者はいない。この国で私が腹だとしたら、民は手足である。彼らを犠牲にはできない」として民に税を課すことを許しませんでした。

また、戦争に時期にさえ気を遣いました。農作業が忙しい時期は「今戦争をすると民が疲弊する」という理由で戦争を避けました。

彼は「皇帝とは民のためにいる」「民を困らせるとはやってはいけない」という非常にシンプルな行動原理を実践しました。当たり前のことのように感じますが、実はこれがなかなか難しい。皇帝になってしまうと、直接的な情報は入ってきません。全て家来を経由して情報が入ってきます。そのうち段々と民と意識が乖離してしまいがちです。だから太宗は家来に対して「私は直接民の暮らしぶりは見れない。お前たちが私の目となり耳となり、きちんと正確な情報を伝えてくれ。民の実情が見えなくなると国は滅びる」と伝えています。

常に「家来たちが働きやすい環境を作ること」、「民の生活が安定すること」を優先して考えたのです。

今で言うなら「部下(スタッフ)が働きやすいこと」と「顧客のために働くのが自分の仕事」という意識をしっかり持っている状態です。

まとめ

かなり短くまとめてしまいましたが、この記事をきっかけに『貞観政要』に興味を持っていただけたら幸いです。今回の内容をさらにまとめます。

理想的なリーダーとは以下の意識を持った人間です。

  • プレイヤーの時には自分が前線に立っても、リーダーになってからは部下(スタッフ)が働きやすい環境作りを徹底する
  • 過去は水に流し、優秀な部下(スタッフ)を信頼して仕事を任せる
  • 自分に分からないことは部下(スタッフ)に聞き、自分でも調べて勉強する
  • 「自分は顧客のために働いている」という自覚を持ち、顧客を優先することを忘れない

もちろん、最初からこの全てを実践するのは難しいでしょう。

私が思う一番実践難易度が低く、かつ一番重要なのは「自分に分からないことは部下(スタッフ)に聞き、自分でも調べて勉強する」です。

この逆の「とりあえず、黙って俺のやり方をやれ」が最悪です。

チームで働く以上、役割分担が必要です。まずは部下(スタッフ)の意見を聞き、自分に分かっていないことを学ぼうとする姿勢を持つことが大切です。この姿勢さえ持っていれば、人はついてきてくれます。まずはこれから始めましょう。

上司(リーダー)になってからも成長は続きます。上の人間が学ぶ姿勢を持っていれば、下の人間も学びます。学ぶ姿勢を持ち続け、良いチームを作りましょう。

ここまで読んでいただいてありがとうございました。

みなさんの世界が、また少し美しくなりますように。

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