どのようにしてイノベーションが生まれるのかを知ろう!~『世界で最もイノベーティブな組織の作り方』  山口 周 著②~

本の紹介

おはようございます。あっぺいです。

今週は山口周さんの『世界で最もイノベーティブな組織の作り方』をご紹介していきます。

山口さんの本は何冊か読んでいますが、教養、知的生産物をテーマにしたものが多く、私が仕事をする上でも非常に参考になっています。

今週ご紹介する『世界で最もイノベーティブな組織の作り方』もその一つです。本書は「イノベーションを生み出すのは個人ではなく、組織である」ということを分かりやすく教えてくれます。

1日目は、「イノベーションとは何か」「日本が生み出してきたイノベーション」について羅生門、螺鈿細工、工学などの具体例をとりあげてご紹介しました。1日目のポイントは以下の3点です。

  • イノベーション=既存のものに新しい考えや技術を取り入れ、新たな価値を与えること
  • 「日本人がイノベーションを生み出すのが苦手」というのは誤解
  • 日本人は自国の魅力に気づかず、海外の劣化コピーを作りがちになる

さて、2日目の今日は「どのような経緯でイノベーションが生まれるか」についてご紹介していきます。

イノベーションが生まれる場所

山口さんは、イノベーションが「不可解な場所」から生まれてきた歴史的事例を指摘します。

それが「リバプール」と「フィレンツェ」です。

ビートルズを生んだリバプール

過去の歴史をひもといてみると、不可解な場所からクオリティの高い知的生産物が生み出されていることがあります。たとえば 20 世紀以降のポップミュージックのあり様を変革したロックグループであるビートルズは、ロンドンではなくリバプールから出現しました。当時から、イギリスにおける音楽の中心地といえばロンドンでありリバプールは大西洋航路のノスタルジーにひたる地方の港町で、特に音楽文化が花開いていた場所ではありません。そのような田舎の港町から、世界を変えるロックグループがなぜ現れたのか? 考えてみると、これはとても不思議なことではないでしょうか。もちろん、いくつかの複合的な要因が作用しているわけですが、音楽史の関係者が共通して挙げる大きな理由のひとつが「当時米国で生まれつつあった新興音楽であるロックのレコードが、最も早く持ちこまれたのがリバプールだった」という事実です。

出典:『世界で最もイノベーティブな組織の作り方』  山口 周 著

音楽の中心地であるロンドンではなく、港街であるリバプールからビートルズを生みました。

しかし、それは必然だったことが分かります。

いつの時代も変化は辺境から生まれます。

辺境は常に異文化との接点になり、既存の文化と異文化が出会う場となるからです。

当時のリバプールはアメリカとイギリスをつなぐ大西洋航路の主要港でした。海運に関わる船の乗組員は、アメリカで大量にレコードを購入し、船内での暇潰しにそのレコードを聴きました。リバプールに到着すると、聞き飽きたレコードを売り払いました。

結果として、リバプールにはアメリカの音楽が溢れることになったのです。アメリカから来た音楽を聴いて育ったジョン・レノン、ポール・マッカートニーが既存のイギリス音楽とアメリカのロックを交配させ、独自の音楽を生み出したのです。

また、同様の事例が中世ヨーロッパにもあります。

ルネッサンスを生み出したフィレンツェ

ルネサンスとは 14〜 16世紀にイタリアを中心に起こった古代の文化・芸術を復興させようとする運動の総称です。中でもフィレンツェを中心に興ったイタリアルネサンスは、皆さんもよくご存じのレオナルド・ダ・ヴィンチやラファエロ、ミケランジェロ、マキャベリといった多分野にわたる天才を生み出しました。訪れたことのある方はご存じでしょうが、フィレンツェはとても小さな街で、せいぜい10キロ四方の広さしかありません。フィレンツェで創造性が爆発した盛期ルネサンスは 15 世紀半ばから16世紀半ばのことですから、たった 100 年足らずの間に 10 キロ四方にも満たない町から、美術史あるいは科学史に大書されるような天才が次々に誕生したわけです。

出典:同書

イタリアの小さな街にであるフィレンツェを中心にルネッサンスは広がりました。

これにはメディチ家の貢献があったとされています。

フィレンツェで銀行業を営んで経済的に成功を得たメディチ家は、その財力を絵画・彫刻・建築・文学・政治学などに提供しました。

莫大な資産を持ったメディチ家がパトロンとして支援してくれるフィレンツェには、様々な異なる個性を持った人材が集まりました。

レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエロの3人もそうです。フィレンツェは小さな街ですから、お互いの存在を意識していたのではないでしょうか。

同じ分野の人間と切磋琢磨して競い合い、違う分野の人間とは刺激を与えあうことで、作品の質も向上し、ルネッサンスは各地へと広がって行ったのです。

リバプールとフィレンツェの例から分かるように、「文化の交差点」となった場所がイノベーションを生み出すのです。

イノベーションを生む人間

前章では「イノベーションを生み出す場所」についてご説明しました。本章では「どのような人間がイノベーションを生み出せるか」についてご説明します。

アメリカの科学史家にトーマス・クーンという人がいます。

クーンは「パラダイムシフト」という言葉を根付かせるきっかけとなった彼の主著、そして歴史的名著である『科学革命の構造』(みすず書房)において「本質的な発見によって新しいパラダイムへの転換を成し遂げる人間の多くが、 年齢が非常に若いか、 或いはその分野に入って日が浅いかのどちらかである」と指摘しています。

出典:同書

パラダイムとは「固定化された物の見方や捉え方」のことです。

かつては地動説(太陽の周りを地球が回っている)ではなく、天動説(地球を中心に天体が動いている)という考え方が一般的でした。これもパラダイムです。

しかし、今ではほぼ全ての人が地動説を信じています。このようなパラダイムの変化を「パラダイムシフト」と呼びます。

クーンは「パラダイムシフトを起こせるのは若者か新参者だ」という趣旨のことを言っています。逆に言うと、1つのことを長く研究している専門家にはパラダイムシフトを起こせないということです。

なぜなら、研究していることが「当たり前」になってしまうため、疑問を持つことだできないからです。固定観念を持っていない若者、あるいは異なる分野から来た人にしか新しい発想を生まないのです。

歴史を振り返ると、その代表的な人物としてダーウィンが挙げられます。

地質学者ダーウィンが進化論を唱える

ダーウィンは、自然選択説を思い当たる際、二つのインプットが重大な契機になったと述懐しています。 ひとつはライエル の『地質学原理』です。ダーウィンは、同著にある「地層はわずかな作用を長い期間蓄積させて変化する」というフレーズに接し、動植物にも同様なことが言えるの ではないか、という仮説を考えたらしい。そしてもうひとつは、有名なマルサスの『人口論』です。「食科生産は算術級数的にしか増えないのに人口は等比級数で増えるため、人口増加は必ず食料増産の限界の問題から頭打ちになる」という予言=「マルサスの罠」を提唱して議論を巻き起こした著作です。この本を読んでダーウィンは、食料供給の限界が動物において常に発生する以上、環境に適応して変化することが、種の存続において重要であるという仮説を得ています。

出典:同書

「進化論」を唱えたダーウィンは生物学者ではありませんでした。

彼は地質学者です。生物学の専門であはありません。

『地質学原理』×『人口論』=「自然選択説(ダーウィンの進化論)」

彼が「自然選択説」という理論にたどり着くのに、生物学の関係のあるものではありません。

彼は生物学において新参者でしかありませんでした。だからこそ「自然選択説」という大胆な仮説を立てることができたのです。

長年生物学を専門とする人間にはそんな突飛な発想をする思考回路はありません。

日本の高度経済成長を支えた開発者

筆者は、日本の高度経済成長期において様々な分野でイノベーションが加速した理由についても、「人材の多様性」という観点から説明できるのではないかと考えています。この時期、太平洋戦争期において様々な領域で研究開発を行っていたエンジニアが、GHQの指導によってそれまでの活動を継続できなくなり、異なる分野、それも多くは民生分野に身を転じることを余儀なくされました。この研究領域のシフトが、多くの分野で様々な「新結合」を促し、イノベーションを生み出す要因となったのではないか、というのが筆者の仮説です。

出典:同書

戦時中に航空機の開発に関わっていたエンジニアは、終戦とともに職を失います。

しかし、彼らの技術は別のジャンルで活かされることとなりました。

高度経済成長を支えたのは日本の自動車産業です。

戦後の自動車産業には、終戦とともに職を失った航空機エンジニアが「新参者」として流れこみました。

戦時中は航空機技術を開発していた開発者たちが、富士重工の「スバル360」や東洋工業(現マツダ)のヴァンケルロータリーエンジンを開発したのです。

もちろん、既存の自動車エンジニアの存在も不可欠でした。

「既存の自動車開発技術」×「航空機開発の技術」=「日本の自動車技術」

このように、異なる分野の理論や技術が衝突する瞬間にイノベーションが生まれるのです。

まとめ

本日は「どのような経緯でイノベーションが生まれるか」についてご紹介しました。

  • 異なる文化が交差する場所でイノベーションが生まれる
  • 様々な個性を持った人物が集まる場所でイノベーションが生まれる
  • 新参者と若者だけがパラダイムシフトを起こすことができる
  • 「既存の理論や技術」×「新参者の理論や技術」=イノベーション

もちろん、専門家は多くのノウハウを持っています。

しかし、新しい視点で物事を見る、という意味では若者や新参者の存在は重要です。

経験が豊かになればなるほど「若いやつの言うことなんて…」と思いがちですが、彼らの視点はイノベーションを生み出すヒントをくれます。

ベテランのみなさん、若者や新参者の意見に耳を傾けましょう。

若者や新参者のみなさん、鮮度の高い自分の視点を大切にしましょう。

「古参」×「新参者」=「イノベーション」です。

ここまで読んでいただいてありがとうございました。

みなさんの世界が、また少し美しくなりますように。

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