「構想」と「実行」を統合しよう!~『NHK 100分 de 名著 カール・マルクス『資本論』➂~

本の紹介

おはようございます。あっぺいです。

今週も『NHK 100分 de 名著 カール・マルクス「資本論」』についてご紹介します。

初回は、マルクスと彼の著作『資本論』の簡単な紹介と、テレビ放送第1回分について簡単にまとめました。

2週目はテビ放送第2回分です。特に「労働時間削減の重要性」についてまとめていきました。

さて、3週目の今日は「資本主義が労働者を支配する仕組み」について説明していきます。

生産性の向上が生み出す悲劇

賃金、つまり「労働力の価値」は、労働者が生活していくのに、いくら必要かで決まるとマルクスはいいます。 一日働いて疲れた労働者は、食事をしたり、睡眠をとったりして、翌日も働けるよう、自らの「商品」たる労働力を回復させなければなりません。マルクスはこれを「労働力の再生産」と表現していますが、労働力の再生産費は生活にいくら必要かで決まります。食べ物、家賃、衣服、レジャー代はもちろんのこと、現代であれば、携帯やインターネット料金も含まれるでしょう。地方なら車も必要です。 ところが、ファストファッションやファストフードが普及すれば、これまで日給一万円もらわないと暮らせなかったのが、例えば八〇〇〇円でも以前と同じ暮らしができるようになる。すると資本家は、労働者に支払う日給を八〇〇〇円に下げることができます。

出典: 『NHK 100分 de 名著 カール・マルクス「資本論」』

かつて、イギリスの経済学者であるケインズは「生産力が上がれば、やがて労働時間は短くなる」と予言しました。事実、生産力の向上に伴い、ロボットやAIが人間の代わりに働く時代が訪れようとしています。しかし「労働時間が短くなる」は決して幸せなことではなく、むしろ「労働者の仕事がなくなる」という側面が強いように感じられます。

また、生産力の向上によって労働者の賃金が低くなっていることも問題です。安くて良いものが大量生産されることは一見喜ばしいことに感じられます。しかし、「生活に必要なものは安く買えるから、賃金も安く抑えても問題はない」という考えのもと、労働者に支払われる賃金が抑制されるのです。

下の図は厚生労働省がまとめたものですが、過去20年間で日本の経済成長率は上昇しているにもかかわらず、労働者に賃金は減少しています。

つまり、働いて成果を上げれば上げるほど、労働者の生活は苦しくなっていくという皮肉な現実があるのです。

「構想」と「実行」

「構想」と「実行」の分離

先述の通り、資本家は、短時間で、できるだけたくさん生産して剰余価値を増やしたい。そのために、労働者もどんどん増やしたい。競争は差し迫っているので、何年も修業しなければ働き手になれないようでは困ります。 だから、資本主義はギルドを解体していくのですが、その際に、重要だったのが、労働者の「構想」と「実行」の分離なのです。つまり、資本にとって都合がいいように、労働の技術的条件そのものをどんどん再編することで、剰余価値生産に最適な生産様式を自らの手で確立していったのです。

出典:同書

何か欲しいものがあって、それを自分で作るとなると、使用用途に合わせてデザインや材質を考えることになります。これが「構想」です。それを元にして、必要な道具や材料を準備し、実際に作っていく過程が「実行」です。マルクスは「構想」を「精神的労働」と呼び、「実行」を「肉体的労働」と呼びました。

DIYや料理は「構想」と「実行」が一体化したものです。頭を使って何を作るかイメージし、体を使ってそれを具体化していく。それが楽しいのでしょう。

だからこそ、DIYや料理が趣味として成立するのです。「構想」と「実行」が分離されたものはただの作業でしかなく、そこから楽しみを感じることは難しいのです。

資本主義に消された職人

労働者が、自分の労働力を「商品」として資本家に売らなければならなかったのは、物理的な「生産手段」──つまり、生活に必要なものを作る手立てを持たなかったからですが、 分業というシステムに組み込まれることで、何かを作る「生産能力」さえも失っていく、とマルクスは喝破しています。

出典:同書

何かを作るとき、構想から実行まで自分でやるのはとても楽しいことです。しかし、それは生産効率が落ちてしまいます。

自分の技術を磨き、何かを作り出す人のことを「職人」と呼びます。

彼らは長い時間をかけて、自分にしかできない優れた作品を作りますが、資本主義社会においては必要とされません。それは、資本主義では「訓練なく誰でも大量に生産できるもの」が求められるからです。一人の職人が時間をかけて丁寧なものを作るより、マニュアル化された環境で誰が作っても品質が安定するものを作る方がいいのです。

マニュアル化された環境での仕事は簡単です。しかし、そこには「構想」がなく、「実行」も分業されているために、仕事にやりがいを持つことができなくなっているのです。

テイラー主義

テイラーは、マネジメントの概念を確立した〝科学的管理法の父〟とも称されますが、テイラー主義は、 生産に関する知というコモン(共有財産)を囲い込む行為にほかなりません。生産に関する知を資本が独占し、資本の都合で再構築された生産システムに、労働者を強制的に従わせる。すると、労働者の立場はどんどん弱くなり、そうなれば、労働時間も容易に延長されてしまいます。

出典:同書

テイラー主義とは、フレデリック・テイラーというアメリカの技術者が提唱したマネジメント方法です。

テイラーは生産工程を細分化し、各工程の動作や手順、所要時間を分析し、作業の無駄を省くために動作に合わせた専用の機器を開発していきました。

さらに生産の計画・管理する人と、実際の作業にあたる人を完全に分離しました。

分業制にすることで、実際に作業する労働者の意識は「規定時間内に自分のタスクを完遂する」ことだけに集中します。時間内に完遂できなければ罰金、作業効率の良かったものには報酬を与えることで、労働者が単純労働に集中せざるを得ない労働環境を作り上げました。

テイラーが工場で仕事を始めたとき、部下であった現場の労働者がまったく自分の命令を聞いてくれなかったことがきっかけで彼はこのマネジメント方法を作ったとされています。

当時の彼の工場で働いていた労働者は「構想」と「実行」が統合された仕事をしていました。

「構想」と「実行」が統合された仕事をする人は職人です。職人は自分の腕に自信がある分、人の命令を聞いて働き方を変えたがりません。

テイラーは生産効率のために職人は不要だと考えていました。誰にでもできる簡単な作業を労働者にやらせることで「お前の代わりは誰もいる」という意識を植え付けていったのです。

「構想」と「実行」の再統合

「マックジョブ」と呼ばれる仕事があります。

専門性が不要であり、誰でもできる単純労働を指します。これこそが「構想」と「実行」が分離された仕事です。

マニュアル化によって仕事は楽になりますが、そこには労働者が主体的に働くことで得られる充実感が生まれません。

もし、仕事にやりがいをもてない時期がきたら「自分の仕事は『構想』と『実行』が分離していないか?この仕事を続けても自分のスキルは向上ないのではないか?」と確認してみるといいでしょう。

もし、自分でやりがいを持てるように改善可能ならいいですが、そうでなければ転職を考えてもいいかもしれません。

転職までしなくとも、「構想」と「実行」が統合された趣味を持つこともいいでしょう。

DIY、料理、絵画、俳句など、自分で一から作り出せる趣味を持つこどで、人生の幸福度を上げることが可能です。

趣味の重要性については下記の記事でもご紹介しています。

まとめ

今回の内容を簡単にまとめます。

  • 労働者が労働効率を上げれば上げるほど、高品質で低価格の商品が生まれる。しかし、それによって労働者の賃金も下げられるという皮肉な事態が起こる。
  • 「構想=何かをつくる時の構想」と「実行=実際に作り上げる工程」の分離が労働を効率化させる。しかし、「構想」と「実行」の分離は労働者から働き甲斐を奪う。
  • もし自分の仕事が「構想」と「実行」が分離されたものであるなら、それらが統合した趣味(DIY、料理、芸術活動)を持つことで人生の幸福度を上昇させることが可能

ここまで読んでいただいてありがとうございました。

みなさんの世界が、また少し美しくなりますように。

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