日本のイノベーションについて知ろう!~『世界で最もイノベーティブな組織の作り方』  山口 周 著➀~

本の紹介

おはようございます。あっぺいです。

今週は山口周さんの『世界で最もイノベーティブな組織の作り方』をご紹介していきます。

山口さんの本は何冊か読んでいますが、教養、知的生産物をテーマにしたものが多く、私が仕事をする上でも非常に参考になっています。

今週ご紹介する『世界で最もイノベーティブな組織の作り方』もその一つです。本書は「イノベーションを生み出すのは個人ではなく、組織である」ということを分かりやすく教えてくれます。

1日目の今日は、そもそも「イノベーションとは何か」についての解説と、「日本人が作ってきたイノベーション」について解説していきます。

イノベーションとは何か?

イノベーション、という言葉をご存じですか?“Innovation”直訳すると「革新」です。

現在では「技術革新」という狭義で使われることもありますが、本質的には「既存のものに新しい考えや技術を取り入れ、新たな価値を与える」ということです。

世界の歴史はイノベーションの連続で成り立っています。狩猟採集時代に、それまで拾っていた穀物を生育するという農耕に切り替えたこともイノベーションの一つです。国を所有するという概念が生まれこともイノベーションですし、戦争における兵器の発明もイノベーションです。

言い出したらキリがありませんが、身近なものでいうと、スマホも一つのイノベーションですね。携帯電話の画面を大きくして、電話機能以外の様々な機能を付帯させ、スマホ一台ですべてが可能な時代になりました。

日本ではイノベーションは生まれないのか?

本書の冒頭で山口さんはある誤解について教えてくれます。

その誤解とは「日本人には創造性がないので、そもそもイノベーションに向いていない」というものです。

確かに、ここ20年ほど、日本ではイノベーションが起こらず、他国で生まれたイノベーションの恩恵を享受しているという面があります。実際、先ほどご紹介したスマホはアメリカで生まれたものですし、日本が生み出したイノベーションを身近に感じることは少ないのではないでしょうか。

山口さんはこの「日本からイノベーションが起こらない」理由についてこう説明します。

日本人は往々にして、潜在的にグローバルな競争力のある日本オリジナルの作品の価値を見抜けずに大きな機会損失をこうむる一方で(例・浮世絵)、競争力のない海外のコピー商品を評価して海外進出し、まったく相手にされずに痛い目に遭う(例・宇多田ヒカル)ということを歴史的に何度も繰り返しています

出典:『世界で最もイノベーティブな組織の作り方 』 山口 周 著

つまり、自国にあるオリジナリティあふれるものを過少評価し、海外の真似をしたものを過大評価する傾向があるということです。この考えには同意できます。

私のアメリカ人の友人が日本に遊びに来た時、「電柱がたくさん並んでいるのがクールだ」と言っていました。これは我々日本人にはなかなか理解できない感覚かもしれませんが、自国にないものを日本に求めているわけですから、「日本にしかないもの」が海外から評価されるのは当然でしょう。個人的には好きですが、宇多田ヒカルさんは「日本らしさ」を感じさせるものではなく、海外からニーズが無いのは当然のことです。

推測ですが、日本は歴史的に中国という大国から影響を受け続け、明治維新後も常にヨーロッパやアメリカの技術や文化を学び続けてきたことから、「他国の価値観で自国のものを評価する」とい癖がついてしまったのではないでしょうか。

しかし、「他国から学び続けてきた」日本だからこそ、イノベーションを起こす素養があるのです。

その例として、山口さんは映画『羅生門』を挙げます。

『羅生門』のイノベーション

1982年に行われたヴェネチア国際映画祭50周年記念祭の歴代グランプリに『羅生門』が「グランプリ・オブ・グランプリ」として選出されています。つまり、過去50年間で最も優れた映画とされたわけです。

そもそも、『羅生門』は日本での評価が低い映画でした。企画段階からこの映画の製作に懐疑的だった大映(制作会社)の社長は映画の内容が理解できず、完成作品を見て憤慨したそうです。実際お客さんもあまり入らず、制作に関与した人をことごとく左遷していきました。

しかし、ヴェネチア国際映画祭の審査員たちからの評価は非常に高いものでした。「同じ事件を他者からの視点で語ることで事実という概念が揺らぐ」という東洋的なプロットが衝撃的だったのです。

監督の黒澤明は以下のように述べています。

日本人は、何故日本という存在に自信を持たないのだろう。何故、外国の物は尊重し、日本のものは卑下するのだろう。歌麿や北斎や写楽も、逆輸入されて、はじめて尊重されるようになったが、この識見の無さはどういうわけだろう。  悲しい国民性というほかはない。 

出典:『蝦蟇の油 自伝のようなもの』 黒澤 明 著

山口さんはこのエピソードを「日本人の創造性は高い」ということと「個人の持つ高い創造性を組織が活かしきれていない」という課題を象徴するものだろうとしています。

『羅生門』は芸術分野におけるイノベーションでしたが、それ以外の分野でも同様のことが起こっています。

デザインにおけるイノベーション

出典:wikipedia

個人の知的活動を支援する「パーソナルコンピュータ」という概念を1960年代に提唱した「パソコンの父」=アラン・ケイ は、日本を訪れた際、国立博物館で螺鈿細工の印籠を見て「日本人は200年も前にこんなにクールで美しいモバイルを作っていたのに、なんで今はあんなに醜い携帯電話しか作れないのか?」と周囲に尋ねていました。生活の中から失われた「美」は、やがてそこに暮らす人の感性をも鈍麻させます。そして、鈍麻した感性を持った人々が経営学やマーケ ティングスキルを頼りに作り出すさらに醜悪なプロダクトが世の中に溢れ、社会の美を根こそぎ奪っていくことになるでしょう。

出典:『世界で最もイノベーティブな組織の作り方 』 山口 周 著

前述したように、我々日本人は常に他国から学び続けてきました。本質的な部分を学ぶことは重要だったのですが、付随してそうすべきでない真似までするようになりました。デザインもその一つです。ドイツの建築家であるブルーノ・タウトが来日した際に桂離宮を見て、感動のあまりに泣いてしまったという話があります。外国人にとって、日本の伝統的な建築物は非常に魅力的なのです。

また、着物もそうです。我々は洋服を日常的に着ていますが、着物もまたその優れた芸術性、さらに体型に左右されずに着ることができるという構造上の利点を持っています。しかし、今ではその素晴らしさを日本人の我々が理解できない状態になっています。

このように、我々日本人の感性に合った美を排除し、極端に欧米の猿真似を繰り返していった結果、「美」の感性が失われてしまったと言えます。

工学におけるイノベーション

また、工学の分野でも日本は優れたものをたくさん生み出しています。

最後に、工学エンジニアリングの分野でも日本人の創造性は疑いようがありません。古くは剛性低下方式というユニークな設計方式を用い、当時の戦闘機乗りをして「天下一品の操縦性」と言わしめた零式艦上戦闘機(ゼロ戦)や、強力な火器とコンパクトな船体設計を両立させた戦艦大和、近代に目を転じれば世界の風景を激変させたウォークマンや液晶テレビ、世界の交通革命の先駆けとなった東海道新幹線、環境配慮時代の先鞭をつけたプリウスなど、日本人の創造性が発揮された工業品は枚挙にいとまがありません。

出典:同書

このように「日本人は創造性がない」という誤解がありますが、実際のところ、日本人は「他国から技術や文化を学び、それを発展させる」ということを得意としています。

今日ご紹介したものも全てそうです。

日本の伝統的な建築物、また着物は唐代の中国から持ち込まれたものです。中国で唐が滅亡した後も、日本の国内でその文化は熟成されていきました。

映画もそうです。アメリカから持ち込まれた映画に、黒澤明が東洋の感性を加えることで日本の映画は世界から注目されることになります。『七人の侍』が『荒野の七人』としてリメイクされ、アメリカでも人気を博しました。

今回はご紹介しませんでしたが、ジャパニーズ・アニメもその典型です。

ウォルト・ディズニーがアメリカで作ったアニメーション技術が日本に持ち込まれ、今では日本のアニメが世界中に輸出されている状況です。

このように、「日本人に創造性がない」というのは完全に誤解であり、むしろ『羅生門』のエピソードで紹介したように「個人の持つ高い創造性を組織が活かしきれない」ということに問題があるのです。

次回、「組織が個人をだめにする」理由について詳しくご紹介していきます。

まとめ

本日の内容をまとめます。

  • イノベーション=既存のものに新しい考えや技術を取り入れ、新たな価値を与えること
  • 「日本人がイノベーションを生み出すのが苦手」というのは誤解
  • 日本人は自国の魅力に気づかず、海外の劣化コピーを作りがちになる

今週は山口周さんの『世界で最もイノベーティブな組織の作り方』をご紹介していきます。

近年、日本ではイノベーションは生まれにくくなっています。筆者の山口さんはその原因を「日本人という『個人』ではなく日本の『組織』の問題である」とした上で「イノベーションが生まれるための組織作り」の方法を教えてくれます。

明日は「イノベーションの具体例」から「イノベーションが生まれるのに必要な条件」についてご紹介していきます。

ここまで読んでいただいてありがとうございました。

みなさんの世界が、また少し美しくなりますように。

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