大英帝国時代のイギリスを知ろう!~『世界システム論講義 ──ヨーロッパと近代世界 』川北稔 著⑤~

本の紹介

おはようございます。あっぺいです。

今週の月曜日から川北稔さんの『世界システム論講義 ──ヨーロッパと近代世界 』をご紹介しています。

「世界がどうして今の状態になっているのか」を長期的かつ広範囲の視点から考察した名著です。

この本を読むことで、世界の現状を俯瞰で捉えることができます。

1日目の記事では「世界システム論」についてご紹介しました。

世界を「国の集合体」としてではなく「一つの生物」として捉える考え方を「世界システム論」と言います。

すべての国が「工業化された豊かな国」というゴールに向かって用意された自分のレーンを走っているのではなく、たった一本のレーンを各国が押し合いへし合いながら走るため、国によって格差が生まれてしまいます。

2日目は「なぜ現在の世界でヨーロッパが中心となったのか」についてご紹介しました。

15世紀まではヨーロッパシステムよりも中華システムの方が優位でした。しかし、中国は巨大な帝国を維持するためにエネルギーを内政に向ける必要があり、侵略目的で海外に進出することはしませんでした。

それに対して、ヨーロッパ各国は他国との競争のために資源を求めて海外に進出します。結果としてアメリカを発見し、植民地化することで、莫大な資源をアメリカから供給することができたのです。

アメリカから資源を収奪し続け、競争を続けたヨーロッパ各国は技術的にも経済的にも成長し、世界の中核となったのです。

3日目は、大航海時代のポルトガルとスペインがアメリカに進出していく過程をご紹介しました。

最初に海外進出をしたポルトガルの目的はあくまでキリスト教の布教と香料の獲得でした。そのため、アジアの交易ネットワークに参入し、安く香料を仕入れてヨーロッパに高く売るという商業的な成功を収めたものの、その後衰退していきます。

ポルトガルより出遅れたものの、黄金郷を求めてスペインも海外に進出します。アメリカ大陸を発見したスペインはヨーロッパからサトウキビの苗を持ち込み、アメリカで大量生産することに成功します。また、銀山を開発し、大量の銀をスペインに持ち込みました。

しかし、それらの利潤はスペイン王室で浪費され、ポルトガルを併合するものの、その後衰退していきます。

4日目はそのスペインの衰退後に隆盛を極めた最初のヘゲモニー国家であるオランダについてご紹介しました。

オランダは卓越した造船技術を持ち、優れた漁船で北海のニシン漁を独占します。また、その造船技術で貿易船を作り、バルト海貿易も独占します。それによって集まった資金がアムステルダムに流れ込み、アムステルダムが世界の金融センターとなります。結果としてオランダがヘゲモニー国家として君臨することになります。

しかし、国家がヘゲモニー化することで、労働者の賃金が上昇し、生産力が低下し、その影響が商業、金融まで波及し、少しずつ衰退していきます。

5日目の今日は、イギリスです。

イギリスは16世紀においては小国でした。典型的な低開発の状況で、植民地も持ちませんでした。農業生産性も低く、基本的な経済活動は全て狭いイギリスの国土にある植物に依存していました。

では、小国であったイギリスがどのようにヘゲモニー国家となっていくのかご説明します。

商業革命

産業革命はなく、商業革命です。

「商業革命」は、イギリスの貿易の爆発的成長を意味したが、その実態は、主に奴隷制プランテーションで生産される「世界商品」となった植民地物産の、奔流のような輸入を原動力とするものであった。表面上は、「貿易」というかたちをとったアメリカは、イギリスにとって、ポメランツのいう「幻の耕地」(ゴースト・エイカリッジ) となり、東欧とともに、砂糖、木材、そしてのちには棉花という、圧倒的な土地生産物をもたらしたのである。

出典:『世界システム論講義 ──ヨーロッパと近代世界 』川北稔 著

16世紀後半までイギリスの小国に過ぎませんでした。

このイギリスが国力を増すのは17世紀後半からです。

商業革命には17世紀後半から18世紀後半までに起こった2つの要素がありました。

  1. 貿易相手の急増
  2. 貿易商品の急増

順番に説明します。

貿易相手の急増

それまでのイギリスの貿易相手はトルコの地中海沿岸、またはヨーロッパ内部でした。しかし、ポルトガル、スペインがアメリカ大陸を植民地支配したことで、そこにマーケットが生まれます。

また、東インド会社が置かれたアジアもマーケットとなります。さらには、奴隷貿易を展開したアフリカにもマーケットが生まれます。アメリカが独立する直前には、アジア・アフリカ・アメリカの新市場を方がヨーロッパよりも大きな交易対象になっていました。

貿易商品の急増

貿易相手が増えることで、取引される商品も変化します。

かつてはイギリスにとって他国へ輸出される生産品は毛織物しかありませんでした。

しかし、アメリカ大陸の発見によって、タバコ・茶・砂糖・綿織物など、植民地からの輸入品を再輸出することが可能になったのです。

また、アメリカ大陸にも鍋・釘・農具など、ヨーロッパでは使われない雑工業製品が輸出されました。

この雑工業製品をアメリカ大陸に輸出したことにも大きな意味があります。

これにより、アメリカ大陸の生活をイギリス化することに成功したのです。

商業革命がイギリスにもたらした影響

「商業革命」はまた、当然のこととして、ロンドンやブリストルのような港町を発展させた。ほとんど目立たない小集落であったリヴァプールが大都会に発展したのは、その典型であった。こうして従来は考えられなかったほどの大都会が成立した結果、都市的な生活文化が広がった。

出典:同書

貿易によって港街が発展するのは必然です。

港街に輸入品が持ち込まれるため、その恩恵を最初に享受するのも港街になります。

日本でも神戸や横浜が典型的な都市化した港街ですね。

都市化によって様々な生活の変化が起こります。

一部の特権階級だけではなく、一般市民の消費行動にさえ変化が起こります。

砂糖に入った紅茶

イギリスと聞いて「ティータイム」イメージする人は多いでしょう。

アメリカ人がコーヒーを好むのと対照的に、「伝統的なイギリスでは紅茶を好む」という印象を私は持っていました。しかし、イギリス人が紅茶を飲むのはこの商業革命の影響です。

お茶の原産地はインドです。そして、砂糖はアメリカ大陸の植民地が原産地です。

これらは両方ともイギリス国内で生産されたものではありません。輸入によってイギリスに持ち込まれた高級品です。

この高級品であるお茶と砂糖を同時に摂取するというのは、経済的に豊かなイギリス人にだけ許された特権でした。

「砂糖入り紅茶」に象徴される「イギリス的生活習慣」の成立は、こうして、イギリスが「帝国」を形成し、「世界システム」のトップに位置したことの結果だったのである。ヨーロッパとアジア・アメリカ・アフリカをつなぐ交易のリンクができあがり(「商業革命」)、イギリスがその中心に座ったことで、イギリス人は、世界中の人びとが生産したものを、もっとも安価に手に入れることができるようになったのである。「茶に砂糖を入れる」という破天荒な思いつきは、このような「幸福な」立場に立ったイギリス人にしかできなかったことなのである。

出典:同書

砂糖と紅茶は典型的な例ですが、それ以外にも多くの輸入品をイギリス人が消費するようになりました。イギリスが世界の中心となっていく過程で国民の生活水準が向上し、嗜好品を消費することが当然となったのです。こういった生活水準の変化を本書では「生活革命」と呼んでいます。

そして、この生活革命をきっかけとして産業革命が起こりました。

産業革命

イギリス産業革命は、つぎのような手順で生じたといえる。まず、イギリスが世界システムの中心の地位を固める過程で、カリブ海や北アメリカでアフリカ人奴隷が生産した植民地物産やアジア物産が、イギリス国内に引き起こした「生活革命」があり、そうして成立したイギリス人の生活様式に不可欠なもの、たとえば、輸入綿織物を国産品に置き換える、いわゆる「輸入代替」が起こった。それが産業革命のスタートである、と。綿織物は、奴隷貿易の主要な商品となっていたうえ、カリブ海植民地で多少の棉花がつくられたため、主要な奴隷貿易港となったリヴァプールの後背地マンチェスターは、この輸入代替産業の立地としてベストであった。

出典:同書

それまでイギリスでは毛織物が使われていました。

しかし、綿織物が輸入されてからは綿織物が人気となります。軽くて薄くて使い勝手がいいからですね。最初は贅沢品でしたが、イギリス人の生活水準が向上すれば大量に綿織物を消費します。しかし、加工された綿織物には人件費がかかっているため割高です。ここで「綿花を輸入して、自分たちで加工して綿織物を製造すればコストダウンができる」という発想が生まれます。

こうして綿花が輸入され、それを加工する工場が作られるようになり、それが産業革命につながります。

こうして、イギリスはヘゲモニー国家として世界の中核へと成長していったのです。

まとめ

イギリス以外にも、植民地から仕入れた生産物を輸出した国は多くありました。

しかし、イギリスが他のヨーロッパの国と違った点は次の2点です。

  • 植民地であるアメリカに自国製品を輸出し、植民地をマーケットとして利用した
  • 加工された輸入品ではなく、原料を輸入し、自国で加工して利潤を得た

しかし、イギリスが世界の中心となったのも50年ほどでした。

その後はイギリスから独立したアメリカが世界の中核としてその座を奪います。

本当はもう少しこの本の解説を書きたかったのですが、今日で終わりとします。

私自身は楽しかったのですが、やはり情報としてのニーズがありませんね(笑)

しかし、名著です。興味を持たれた方はぜひご一読ください。

来週からはまた実用的な本をご紹介していきます。

ここまで読んでいただいてありがとうございました。

みなさんの世界が、また少し美しくなりますように。

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